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【ダービー回顧】リアルスティール 失望を覚えた1コーナー

   

 ダービーで2番人気に支持されながらも、馬券圏内に絡むことが出来ず4着に終わったリアルスティール

 その結果に、レースにおいての実行した戦法について、競馬ファンの間から非難が噴出している。「なぜ後ろから競馬したのだ」と。

 筆者もあの競馬内容には正直がっかりした。週半ばの福永騎手や矢作師のコメントから、ドゥラメンテの後ろに控える競馬を選択する可能性は確かに感じ取ってはいたのだが・・・。

 某所でダービーの予想を発表した時、リアルスティールに対抗を付けたのはこの前に行かない懸念があったから。

 こういう予想は本当に当たる。馬券は当たらないのにね(苦笑)

 今回の記事ではリアルスティールのダービーについて振り返って見たいと思う。状態はどうだったのか、敗因の全ては戦法にあったのかなどを考えてみたい。

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リアルスティールの状態

 マイナス4キロで498キロと、デビュー以来最低の馬体重(新馬戦も同じ)で登場してきたリアルスティール。

 矢作師が「100%の仕上げを目指した」とコメントしていたように、ギリギリまで攻め込まれた馬体だったと思う。これが100%の仕上げかどうかは分からないが、皐月賞よりも研ぎ澄まされた身体付きだったことは間違いない。

 一部で前肢の捌きや後肢の完歩の大きさについて疑問視する声が上がっていたようだが、この馬に関してはこんなものじゃないだろうか。もともと完歩の大きい馬ではなく、スプリングSも皐月賞も、その完歩の小ささで逆に印象に残ったほど。

 この完歩の小ささが脚の回転力の高さに繋がっているのだと思う。レースでスッと好位を取り、勝負どころでゴーサインが出た瞬間に瞬時に反応しギアがトップに入るのは、この回転力の高い脚捌きが源だけに、逆に完歩が大きくなったら良さがスポイルされてしまうのではなかろうか。

 以上のことから少なくとも肉体面に関しては、充分力は出し切れる状態にあったと思う。皐月賞よりもグンと良化したという目に見えた変化は感じられなかったが、ダービーという大一番を迎えるにあたって、合格点の仕上がりだったと思っている。

大きな失望感を味わった1コーナー突入時の位置取り

 リアルスティールの道中の位置取りについて、レース後に福永騎手と矢作調教師がコメントを出していた。以下に引用する。

福永騎手「控えるしかないと思っていた。4コーナーで勝ち馬を見る位置にいたけど直線でビュッと離されて差を詰められなかった。残念です」
矢作芳人調教師「1コーナーの入りで頭を上げて、ハミ受けが悪かった。そのロスが大きかったな。みんな折り合いはスムーズだと言うけど俺の中ではそうでもない。一発勝負に懸けて後ろから運んだのは作戦。最後は舌を出して内にモタれていた。まだ若い馬。やり直します」

 確かにスタートして直後の直線において、リアルスティールのハミ受けが悪くなり一時コントロール不能に陥った。通常であればあのロスは非常に痛かったとは思う。

 ただ改めて2人のコメントを見ていると、あのポジションは戦前の作戦通りだったという。ドゥラメンテを見る位置で後方で脚を溜め、直線に賭ける競馬をするつもりだったと。

 ならばこのレースに関しては、あのハミ受けのアクシデントは大した敗因とはならない。あのアクシデントによりポジションが後ろになった訳だが、あれがなくとも結果的にあの位置になったのだろうから、全くとはいわないが影響は少なかっただろう。

 このコメントを見た時に思ったことは、「ああ、リアルスティールの関係者はこの馬の特性をしっかりと理解し切れてないんだな・・・」と言うことだった。切れ者と言われる矢作師でも、同馬の特性を掴み切れてはいないんだと。

 リアルスティール陣営がこの作戦を選択した理由はなんだろう。筆者が考えるに最大の理由は陣営が常々口にする「抜け出すとソラを使う癖がある」ではなかろうか。先頭に立つと力を抜く癖があると主張しているのだ。

 ここで一つ疑問がある。リアルスティールは本当にソラを使う馬なのか?と。多少そういう面はあるのかも知れないが、今までのレースや追い切りなどを見ているとそこまで酷いものでは、レース結果に影響を与えるほどのものではないような気がするのだ。

 リアルスティールは追い切りで抜群に動く馬なので、大抵の追い切りでは最後抜け出し1頭になる。でもラップなどを見ていると、抜け出した区間もそれなりに締まったラップで駆け抜けており、数字の上では遊んでいるようには思えない。

 陣営がソラを使ったと主張する皐月賞の最後の直線を改めて見てみても、確かにキタサンブラックを交わして先頭に立った瞬間に耳が前を向いている場面はあったが、その後直ぐ後ろからやってくるドゥラメンテの足音を聞き分け、耳を後ろに絞っていた。その間は時間にして1秒にも満たなかっただろう。

 パドックでの状態を述べた箇所でも記したが、リアルスティールは脚の回転が非常に速い馬である。脚の回転が速いということはピッチも多くなるということ。

 人間も馬も一緒だが、加速する時はどうしてもピッチは速くなる。完歩を狭くしピッチの数を稼がなければスピードは乗らないからだ。反面ピッチを速くするとスタミナの消耗もその分速くなるので、余程のスタミナお化けじゃない限りピッチの回転数の高さを長時間維持することは出来ない。

 リアルスティールという馬は現3歳世代の中でも、トップに位置付けできる位ピッチの速い馬だ。ということは瞬間的な加速は世代トップクラスだが、その加速を維持できる区間は短いということ。

 これを競馬界では「一瞬しか脚を使えない」とよく表現するが、リアルスティールもまさにそういう馬だろう。共同通信杯などはまさにそういう特徴をフルに生かして勝った印象がある。

 この事実を考えてみた時、もしかしたら福永騎手も矢作調教師も一瞬しか脚を使えずに必ず最後失速するリアルスティールの特徴を、ソラを使っていると勘違いしている可能性はなかろうか。馬に対する期待値が高すぎる時、ホースマンというものはどこか都合の良い方に考えてしまうことは良くある。

 「早めに抜け出す競馬ではなく、後ろからじっくりと脚を溜める競馬をすれば今まで以上の末脚が使える筈」馬の特性を特に考慮におかず、単純にこのように考える競馬関係者は意外と多い。

 普段のレース後に「溜めればもっと切れる筈」とコメントする騎手が非常に多いのがそれを象徴している。そのレースで騎乗した馬が上がり33秒台前半を使っていても、こうコメントするぐらいなのだから。

 福永騎手も矢作師も、「抜け出してソラを使う癖がある以上、ドゥラメンテの前で競馬しても叶わない。ドゥラメンテをマークし直線勝負に賭けるしかない」と考えたようだ。結果はご存知の通りである。

 東京の直線は長い。その直線で後方から追い込む場合、どうしてもスパートを開始する位置は早くなる。今回のリアルスティールの位置ならば、最低でも直線入り口手前ではギアをトップに入れなければならないだろう。

 先程も述べたように、リアルスティールはあまり長く脚を使えない馬だ。トップスピードを維持できるのは後方で脚を溜めた分を見積もっても、ザッと350mほどだろう。

 東京競馬場の直線の長さは525.9m。直線入り口からスパートを開始しても、脚を使いきった時点でまだ170mほど直線は残っている。よほど前を行く馬が失速してくれない限り、数字の上でも逆転は難しい。

 実際のレースでもまず4コーナーでドゥラメンテとの差を詰めるためにまず脚を使い、直線入り口で接触するアクシデントがあり態勢を立て直す隙に抜け出したドゥラメンテを追う為に脚を使い、結果早々にガス欠に陥り残り200mほどは完全に上位馬と脚色が同じになってしまった。

 リアルスティールの良いところが全く発揮されない、本当に残念な競馬になってしまったと思っている。

 後方からの競馬というのは基本他力本願だ。直線一気というのは見ていて爽快なものだが、馬の実力だけではなく色々な要因が合わさって初めて見られるもので、正直強い競馬内容とは言えない。

 同じ後方待機でもディープインパクトのように勝負どころで自分で動いて行き勝ちきる馬は本当に強いと思うが、この日のリアルスティールは完全に展開任せの競馬に徹していた。これではダービーの栄冠を取れる筈もない。

 過去10年のダービーを振り返ってみても、ダービー馬に輝いた馬はダービーを勝つに相応しい競馬をしている。その輝きがダービーだけだったとしても、ほぼ全ての馬がダービーを勝つという意思を持って自分で動き、勝利を引き寄せていた。

 しかしリアルスティール陣営はダービーを勝つというよりも、ドゥラメンテに勝つということに目標を置いていたように思う。あと福永騎手はリアルスティールの能力を発揮するということにも意識が向いていたかもしれない。

 普段のレースならともかく、この意識だとダービーにおける勝利の女神は微笑みかけてくれないよね。貴女(ダービー)が欲しい!と女神に熱く訴えかけていた訳ではないのだから。

 今思えばダービー勝つ競馬をしなかったリアルスティールが馬券圏内をも逃したのは当然だと感じている。陣営はこのレースに向けて必死に頑張ってきたのは間違いないのだろうが、注力する方向性を間違えてしまった結果が、このような結果となって現れたということだろう。

 - レース回顧

        
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