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【ダービー回顧】ドゥラメンテ その強さは怪物と称するのが相応しい

      2015/06/01

 JRA公式ラップ:12.7 – 10.9 – 11.8 – 11.7 – 11.7 – 12.5 – 12.5 – 12.4 – 12.4 – 11.9 – 11.0 – 11.7
 レース上がり  :4F 47.0 – 3F 34.6

 『競馬が好きで好きでたまらない!』といった感じで競馬を楽しんでいる知人が、以前こんなことを言っていた。

 「○○さん、本当に強い馬は調子とか枠順とか関係ないんすよ!」と。

 その時は苦笑しながら「何をアホなことを言ってるんだ」とその知人のことをイジッていたのだが、実際ダービーや皐月賞でドゥラメンテが発揮した素晴らしいパフォーマンスを目にした今、「彼の言うこともあながち間違っていないのかな」と考え始めている。

 ドゥラメンテは少々の出来落ちや枠順の不利、適性などを超越して結果を残すことが出来る、それこそディープインパクトやオルフェーヴルと比肩するスーパーホースなのかも知れない・・・と。

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ドゥラメンテは本調子ではなかったのか否か

 このブログをいつもご覧になられている方にはご存知の通り、この週の初めからドゥラメンテの状態に関しては懐疑的な記事をいくつか書いてきた。

 競馬ラボのフォトパドックを参考にしての馬体診断、ダービー一週前追い切りの様子、そしてダービー最終追い切りをみての感想など、1つとして前向きな感想を述べた記事は書いていない。

 様々な情報を総合的に判断し、皐月賞よりも調子落ちしていると結論付けていたと言って良いぐらいだ。

 このようにドゥラメンテの状態に関しては懐疑的な感想を持っていたので、当日のパドックでの状態には非常に注目していた。稀にパドックで別馬のように良化してくる馬も居ない訳ではないので、そこで良く見えたら評価を見直そうと思っていたのだが・・・。

 正直に言おう。パドックを見てもドゥラメンテの仕上がりに関しては好印象は持てなかった。

 毛ヅヤは良くなっていたと思う。馬体のシルエットもキングカメハメハ産駒にしては細身に映ったが、ガレているというレベルまでは行っておらず、ギリギリの線の仕上げを施してきたのだと感じた。

 では何が良く見えなかったかというと、その身のこなし、動きだ。皐月賞よりも前肢の捌きが硬く、肢が前に出ていなかったように感じたし、後肢も皐月賞よりも踏み込みが浅く、一完歩の幅が狭くなっているように思った。

 今年は自宅で観戦していた為、すぐに皐月賞とダービーとのパドック動画を比較し、実際のところどうなってるのか確かめてみた。その結果は先程の感想を裏付けするもの。やはり身のこなし自体は皐月賞よりも悪くなっていたと今でも思っている。

 ところでパドックでの相馬における一つの仮説として、「ギリギリまで攻めた仕上げを施した馬は、実は身のこなしが硬くなる」という説がある。

 この仮説を最初に当て嵌めた馬が2年前のダービーで2着に入ったエピファネイアなのだが、確かにあの時のエピファネイアは一見細く感じるぐらいギリギリに仕上げられ、その身のこなしも本来よりも硬さを感じさせるものだった。

 普通ならば「・・・あれ?」と感じさせる状態でダービーに出走したエピファネイアだが、レースではご存知の通り終始掛かり(というより暴走)気味で、向こう正面では前の馬に接触して躓き、大きくバランスを崩すという致命的なアクシデントに遭遇しながらも、直線であわや勝つか!?と思わせる脚を使い、2着でゴール板を駆け抜けた。

 その走りは勝ったキズナに騎乗していた武豊騎手をして、「エピファネイアはバケモノですよね」と言わしめるものだったが、実は究極の仕上げを施されていたからこそ発揮できたものという考え方がある。

 その仮説を踏まえて考えるのなら、当時のエピファネイアに良く似た状態に映ったこの日のドゥラメンテは、同じように超えては行けない一線のギリギリ一歩手前まで踏み込んだ、究極の状態だった可能性はある。

 正直なところ、筆者には今日のドゥラメンテが果たしてどちら側の状態だったのかは分からない。結果だけ見たら究極の状態だという説の方が説得力を持つだろう。ただ個人的には本当のドゥラメンテはもっと底が深いという、根拠のない直感に似た漠然とした思いもあるのだ。

 いずれにしても本調子に無いと判断したドゥラメンテにダービーを完勝されたのは事実。もっともっと精進し、馬を見る目を鍛えていかねばならないと改めて痛感した。

勝ちにいったデムーロ騎手

 ドゥラメンテのスタート後の位置取りを見て驚いた。上位人気3頭の中で一番ポジションが後ろなのでは?と思われていた同馬が、実はその3頭の中でも1番前。先行する馬たちを見据える8~9番手に付けたからだ。

 昔から存在する格言に『ダービーポジション』というものがある。これはスタートしてから1コーナーに飛び込むまでに、10番手以内に付けないとダービーでは勝てないという意味の言葉だが、競馬が昭和から平成へと移ろい月日を重ねるごとに、徐々に聞かれなくなって来た。

 この日ワンツーフィニッシュした2頭、ドゥラメンテとサトノラーゼンは共に1コーナーを10番手以内で通過していた。道中もそこからポジションを落とすことなく、常に前を向きながら競馬を展開している。

 JRAの馬場造園技術が進歩し、以前よりも走り易く時計の出やすい馬場が一般化した現在、そして優れた血の導入が進み、また調教技術の発展から競走馬間の能力格差が狭まった現在、レース序盤にポジションを取りに行く重要性は明らかに高まっている。

 この日の東京競馬場の馬場状態は、晴れて気温が高くなったことにより急速に乾燥し、時計の出やすい、そして早仕掛けしても失速しにくい馬場状態となっていた。そこそこ外差しが決まっていたといっても、4コーナーで中団より後ろにいた馬は用無しだったように、基本前残りの馬場状態だった。

 そのような馬場状態をしっかりと頭に入れ、レース序盤からポジションを取りに行った騎手がミルコ・デムーロ騎手であり、岩田康誠騎手であった。上位5番人気までの騎手で、このように馬場状態を頭に入れ勝負したのは、この2人だけだったと言ってよい。

 1番強い馬に乗った騎手が、1番勝ちに行く競馬をした。馬の状態や道中のペースなどを抜きにすれば、結果は火を見るよりも明らかだったと言わざるを得ない。

 ただドゥラメンテは本当に強かった。レース自体も中盤で少し流れが緩くなったとはいえ、前半の1000mは58秒8で通過しており、この時期の3歳馬によるレースということを考えれば、ダービーの名に相応しい締まったレースだったと思う。

 最後の直線、残り400mから200mの区間においてドゥラメンテは素晴らしい末脚を使うのだが、推定で10秒6から10秒8前後の脚を使っていると思う。

 かなりの高速馬場だったとはいえ、それなりのペースで2000m以上を走ってきた上で、更に究極ともいえる爆発的な脚を使うのだから、これはもうスーパーホースとしか言い様がない。

 正直他のライバルたちがもっと上手く立ち回ったとしても、ドゥラメンテの勝ちは揺るがなかった気さえする。本当に、本当に素晴らしく強い2冠馬が誕生したと、今更ながらに感動している。

ドゥラメンテの今後

 圧倒的な強さで皐月賞、ダービーの2冠を制したドゥラメンテ。レースが終わったばかりで気の早い話しなのは重々承知しているが、どうしても今後のドゥラメンテの進路に関して気になるというのが、多くの競馬ファンの正直な気持ちだろう。

 レース後の共同記者会見において、ドゥラメンテを管理する堀宣行調教師は個人的な思いと断った上で、「凱旋門賞挑戦は直ぐにという訳ではなく、もっと馬がしっかりとしてから、完成してから行きたいなと思っている」と語っていた。

 筆者も以前から何度か触れていた話だが、ドゥラメンテは競走馬としてはまだまだ未完成な部分の多い存在だと思う。馬体の成長度にしても精神面での幼さにしても、普通の馬なら「良くなるのは古馬になってから」との枕詞が、レース後のコメントに必ず付いてくるような馬だ。

 ただ競走馬としてのポテンシャルが呆れるほど高い為、完成度が低くても結果を残してしまうのがドゥラメンテ。慎重居士で馬の状態最優先で今まで取り組んできた堀師にしてみれば、結果を残してくれるのは嬉しいものの、周囲の期待がドゥラメンテの成長度を飛び越している現状は痛し痒しというところではなかろうか。

 日本では「凱旋門賞は3歳馬じゃなければ勝てない」という声が非常に大きいが、別に3歳馬ばかりが凱旋門賞を勝っている訳ではない。3歳馬が優勢なのは確かなのだが、古馬だってそれなりに勝っている。事実オルフェーヴルが最初の挑戦で敗れたソレミアは、3歳馬ではなく古馬牝馬だった。

 確かに斤量面の恩恵は3歳馬の方が大きいので、3歳時に遠征するのはベターなのかも知れない。ただ一番重要なのは、その馬がベストのパフォーマンスを発揮できる時期にレースに臨むことだろう。

 ドゥラメンテがベストパフォーマンスを発揮できるのが来年以降ならば、別に今年遠征する必要はないのではないかと筆者も思う。

 実際のところ遠征するか否かを決めるのはオーナーなので、遠征するとなればベストを尽くすのみと堀師も思っているだろう。以前は遠征競馬ではあまり結果の出ていなかった堀厩舎だが、近年は過去の教訓を取り入れ改善を試みたのか、関西遠征はのみならず海外でも安定した結果を残すようになった。

 その点を鑑みると厩舎に勢いのある現在、大舞台への挑戦を実行する機は熟したといえるのかも知れない。

 近年類を見ないほど圧倒的な可能性を感じさせる2冠馬に、日本屈指の名門へと成長した調教師と厩舎スタッフ。このコンビは今後どのような歩みを、我々競馬ファンに見せてくれるのだろうか。

 ダービーにおいて過去の名馬たちをも上回る可能性と、明るい未来を感じさせてくれたドゥラメンテ。彼の将来に更なる栄光が待ち受けている予感を感じ、一先ず筆を置きたい。

 - レース回顧

        
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