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ハープスターの輝きは何故失われたのか?日本馬にとって明暗分かれたドバイシーマクラシックを振り返る ~2015ドバイSCレース回顧~

   

 昨年はジェンティルドンナシリュスデゼーグルとの死闘を制し、見事戴冠を果たしたドバイシーマクラシック(首GⅠ)。

 今年は昨年引退した名牝に続けと日本からハープスターワンアンドオンリーが参戦。2年連続となる日本馬による制覇が期待されたが・・・。

 最後の直線鋭く抜け出したのは、フランスの名手クリストフ・スミヨン騎手騎乗の4歳牝馬ドルニヤDolniyaだった。

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日本馬のシーマクラシック連覇が期待されたが・・・

 ■ドバイシーマクラシック出走馬の全着順と個別ラップはこちら
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 まず始めに当日のメイダン競馬場の芝状態について述べておこう。

 例年日本馬の活躍が目立つように、欧州タイプの芝でもそれほど重くなく走破時計も比較的速いメイダンの芝コース。展開次第ではマイル戦でラスト33秒台の時計が出ることも珍しくないほど走り易いメイダンの芝だが、28日は前日に雨が影響が残ったせいか若干時計が掛かり気味で、少しタフな馬場状態だったと思う。

 このレースの一つ前に行われたG1ドバイターフ(旧ドバイデューティフリー)では、芝1800mで走破タイムが1分47秒765。日本式に直すと1分46秒2程度となる。前半ややスローだったとは言えそこそこ時計は掛かっており、日本のやや重ぐらいのイメージだったのではないだろうか。

 日本から参戦した2頭、この内ワンアンドオンリーにとっては比較的歓迎すべき馬場状態だったろう。スピードには不安があるタイプなので、あまりに高速馬場過ぎると向かなくなる可能性があるからだ。

 逆にハープスターにとってはマイナスだったかも知れない。同馬は切れ味身上の馬だけに、出来れば軽い馬場の方が良かっただろうと思うのだが・・・。

今年の凱旋門賞有力馬に名乗りを上げたドルニヤ

 勝ったドルニヤは馬も強かったがスミヨン騎手も上手かったね。

 道中はインのラチ沿い3番手を追走。これは先に行われたUAEダービーでも見られたポジションで、彼の十八番としているレース運びだ。スタートしてから好位にスッと付け、そこで上手に脚を溜めるという一連の動作が、スミヨン騎手は世界の騎手の中でも卓越している。これが彼を世界最高峰の騎手ならしめている言っても、過言では無いほどだ。

 そのスミヨン騎手の絶妙な手綱捌きに導かれたドルニヤ。直線入り口での手応えは段違いであっさりと先頭に踊り出ると、あとは牝馬特有の切れで一気に後続を突き放すのみ。

 後方から昨年の凱旋門賞2着馬フリントシャーFlintshireが必死に追い縋るが、すでにセーフティーリードを築き上げたドルニヤには迫ることが出来ない。

 推定上がり34秒7の末脚を駆使し、2着馬に2馬身半ほどの差を付け先頭でゴール板を駆け抜けたドルニヤ。嬉しいG1初制覇を飾ると共に、今年の凱旋門賞有力馬に名乗りを上げたと言えるだろう。

 10月のロンシャンではきっと強力なライバルとして、トレヴと共に日本馬の前に立ちはだかる筈だ。

向かない流れの中、3着と健闘したワンアンドオンリー

 正直ワンアンドオンリーの3着という結果には驚いた。スローペースが濃厚で切れ味勝負になると分が悪い同馬にとって、ここは苦戦は必至だと考えていたからなのだが・・・。

 実際レースはその想定どおりに進んだ。戦前から言われていたように明確な逃げ馬が不在だったシーマクラシック。結果としてイギリスから参戦した牝馬ジャストザジャッジJust The Judgeが逃げる形になったが、やはりかなりのスローペースでレースは進むことになる。

 1200m通過が日本式で1分15秒2、2000m通過が2分3秒フラットという、馬場差を考慮しても相当なスローペース。実際当初3番手を追走していたワンアンドオンリーも、あまりのスローペースに我慢し切れずに2番手に進出しており、鞍上のクリスチャン・デムーロ騎手も折り合いを付けるのが大変そうだった。

 こういう流れになると、もう直線での瞬発力勝負を回避することは出来ない。それは切れる脚を持たないワンアンドオンリーにとっては苦手な勝負であり、実際直線入り口ではドルニヤにあっさりと交わされてしまった。

 続いてフリントシャーにも交わされ、正直万事休すかと思ったのだが・・・。道中折り合いを欠いて消耗していたはずのワンアンドオンリーはそこから意地を示す。脚が上がり気味の中でも懸命に脚を伸ばすと、そのまま3番手のポジションを譲らずにゴール板を通過。日本にいた時よりも一皮向けた姿を、異国の地ドバイで見せてくれたと思う。

 今回明らかに向かない流れの中で3着と健闘したことは、これからの同馬の競走馬生活の中で大きな糧となるだろう。噂されている今年の英国遠征も、これならば少しは期待できそうだ。

 実際のところキングジョージは世界の競馬の中でも屈指のタフさを要求されるレースなので、正直現状では相当厳しい戦いになるとは思っている。ただ挑戦しないことには栄光もないし、叩かれても叩かれても這い上がる強さがないと、真の一流馬への成長出来ないことも多い。

 レース直前となればまた無謀な挑戦と呼ばれるかもしれない。それでもワンアンドオンリーがそれを糧にできると信じ、応援しようと思っている。

まるで良さが出なかったハープスター

 果たしてどうしてしまったのか?直線であえぐ彼女の姿には、昨年の眩いばかり光は微塵も感じられなかった。

 昨年の凱旋門賞で見せた驚異的な末脚により、ここでも多くのブックメーカーで1番人気に支持されていた昨年の桜花賞馬ハープスター。

 前哨戦の京都記念では5着に敗れたとはいえ、一叩きし万全の状態でドバイに乗り込んだと言われていたのだが・・・。最後の直線、今まで見せていた爆発的な末脚は影を潜め、早々に馬群に沈んでいく彼女の姿に目を疑った競馬ファンは多かったのではないだろうか。

 なぜハープスターは全く良いところを見せずに敗れたのだろうか?いくつか敗因として考えられることはあるが、最大の要因は「距離」だと思う。

 前々から囁かれていたように、ハープスターは本質的にはマイラーだという意見は根強い。私も馬体構造的には同馬は中距離もこなせるマイラーだと前々から考えていた。

 ところがハープスターは3歳時までは実際に2400m戦でも結果は出している。結果6着に敗れたとはいえ強烈な末脚を見せた凱旋門賞も、タフなロンシャン芝2400mで行われた。

 なので同じ距離であるシーマクラシックでも好走してもおかしくないという考え方もあるだろうが、競走馬の中には若いうちは距離をこなせても、古馬になると短い距離にシフトするという馬が少なくない数で存在する。

 なぜそうなるかというと、一番の要因は古馬になり身体全体に筋肉が付いた影響で関節の稼動域が狭まり、身体の柔軟性が失われることによってストライドが縮小。一完歩の幅が狭くなって距離における脚の回転数が増大し、最終的にスタミナ切れに繋がるという考え方だ。

 今回のレースでハープスターはいつものポジションよりも若干前目の5~6番手で競馬をした訳だが、ペースを考えるとこのポジションで競馬したことが末脚に影響したとは、正直考え辛い。実際勝負どころでも一瞬はピッチも上がり反応しかけているのだが、すぐに脚が上がりズルズルと後退してしまった。

 この下がり方を見る限り、やはり直線早々にスタミナ切れに陥ってしまったという見方が有力だろう。実際この日のハープスターの走りを見ていると、特に直線に至るところのストライドの伸びが、昨年よりも狭くなっているように感じた。馬体が成長したことにより、関節の稼動域が狭まったと見て間違いないと思う。

 前走の京都記念のパドックの時に感じたのだが、ハープスターも古馬となり明らかに3歳時よりも馬体に幅が出てパワーアップしてきていた。その時は馬が成長したと素直に喜んでいたのだが、実はその時点でハープスターからは距離の柔軟性は奪われていたのかも知れない。

 この考え方が合っているとすると、今後クラシックディスタンスの距離でハープスターに活躍を求めるのは厳しくなるだろう。いくら馬場の軽い日本とはいえ、やはり距離の壁は厳然と立ちはだかる筈だからだ。

 オーナーサイドを含む陣営としてみれば、今までクラシックディスタンスで結果を出すことを第一に取り組んできただけに、ここですぐさま距離短縮には心情的にも踏み切り難いだろうとは思う。ならば本格的な路線短縮は一先ずおいといて、まずは暫定的にマイル位の距離を使ってみるという考え方をしてみてはどうだろうか?

 幸いにして日本にはヴィクトリアマイルという、ちょうどいい距離のレースがある。ここならば他に使うレースが無いことも有り、気持ち的にも使い易いだろう。ここで良い結果を出すことが出来れば、「やっぱりマイルの方が良さそう」と今後の路線についても踏ん切りは付き易い。

 過去の名牝たちと並び称される存在であるハープスターながら、実はこれまで獲得したG1タイトルは桜花賞のみ。本来ならばもっとたくさんのタイトルを獲得していておかしくない馬だけに、このまま終わってはならないというのは関係者の総意だろう。

 人間のエゴでハープスターの可能性を縮めない為にも、関係者には柔軟な思考をお願いしたいと思う。

 - レース回顧, 海外競馬

        
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