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ゴールデンホーン 天才騎手に導かれ名牝の夢を打ち砕く / 凱旋門賞回顧

   

 フランキー・デットーリといえば日本の競馬ファンにも良く知られた天才騎手である。

 彼の天才ぶりを評した言葉と言えば、社台ファーム総帥の吉田照哉氏が述べた「デットーリが騎乗すると、他の騎手とは5馬身違う」が有名だが、その言葉を裏付けるかのような素晴らしい騎乗を世界各地で連発。

 日本でも不振に陥っていたイーグルカフェをJCダートで勝たせると、翌日にはファルブラヴでJCを制して2日連続G1勝利を成し遂げるなど、鮮烈な印象を残している。

 その天才騎手デットーリが、世界最高峰の一戦でまたもや素晴らしい騎乗を見せ、パートナーを世界一の座へと導いた。

 そのパートナーの名はゴールデンホーンGolden Horn。フランスの希望、名牝トレヴの凱旋門賞3連覇の夢を打ち砕いた、偉大なる英国ダービー馬である。

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 スタートでは少し出遅れてしまったゴールデンホーン。しかし二の脚は速くすぐさまポジションを挽回するため前方に進出する。

 ここで鞍上のデットーリ騎手は周囲の意表を突く行動にでる。スピードを上げたパートナーを、馬群から離すかのように外に導くデットーリ騎手。誰もがその行動に驚いたのではないだろうか。

 しかしその行動はデットーリ騎手にとっては予想外でもなんでもなく、充分に計算された勝つ為の戦略の一つだった。

 実は筆者は今回と同じような光景を、今年の6月にフランスで行われたレースで観ている。

 そのレースの名はディアヌ賞。別名フランスオークスと呼ばれるレースであり、このレースでデットーリ騎手はスターオブセヴィルという名の牝馬に騎乗していた。

 ゲートが開きスタートを決めたスターオブセヴィル。そうするとデットーリ騎手は今回のゴールデンホーンと同じように馬を外に導き、少しのあいだ馬を馬群から離して追走。

 他の各馬の隊列が大体定まったのを確認すると、スーッと馬を内に導き逃げ馬の直後、2番手の絶好のポジションを確保。そのポジションのまま最後の直線まで気分良く馬を走らせると、最後は2番手から抜け出し先頭でゴール板を駆け抜けてみせた。

 ディアヌ賞が行われたシャンティイ競馬場とロンシャン競馬場の違いはあるものの、同じフランスの地で全く同じようなレースを仕掛けたデットーリ騎手。明らかにあの時の再現を狙っていたのは間違いないだろう。

 ゴールデンホーンという馬は非常に真面目な気性の馬で、ちょっと気合を付けると直ぐに先頭に立ってしまうようなところがある。

 実際7月に出走したエクリプスSでは、スタート直後に少し気合を付けただけでグンと行き脚が付き、結局逃げる羽目になってしまった。そのレースは勝ったから良かったものの、この前向きさは諸刃の剣になると、その時関係者は強く思ったことだろう。

 だからこそデットーリ騎手はスタート直後、あえて馬群から離して走らせたのだと思う。ゴールデンホーンを周りに馬がいない状況に置くことにより、スタート直後の興奮状態を沈静化。比較的コントロールし易い状況を整えた後、コーナーに突入する前に2番手の絶好位を確保。

 これがぶっつけ本番であったら、さすがのデットーリ騎手といえどもこれらタスクを落ち着いて実行出来たか分からないが、彼にはディアヌ賞で上手く行ったという成功体験があった。その成功体験が彼に自信を与え、背中を強く押したことは間違いないだろう。

 逃げ馬の直後2番手で折り合うゴールデンホーン。逃げたシャハーがかなりのスローペースで逃げた為、途中少し行きたがるそぶりは見せたが、それでも大きく折り合いを欠くことなく、スムーズに追走できていたと思う。逆にトレヴのほうが自分のペースメイカーが生み出した流れに苦労していた。

 フォルスストレートも難なく通過し、最後の直線を迎えたゴールデンホーン。ギリギリまで追い出しを我慢したデットーリ騎手が満を持して追い出しを開始すると、スパッと切れる脚は無いものの、ジリジリと後続を突き放しに掛かる。

 最後は後続に2馬身あまりの差を付け、先頭でゴール板を通過したゴールデンホーン。ここまで7戦6勝、敗れたのはただ1度だけという強い英国ダービー馬が、偉大なる天才騎手に導かれまた一つ大きな勲章をその背に刻み込んだ。

 これで名実共に欧州最強馬の称号を手に入れたゴールデンホーンだが、レース後同馬のオーナーブリーダーであるオッペンハイマー氏は今年限りでの引退を発表。来年から英国ダーレーダルハムホールスタッドで種牡馬入りすることを発表した。

 今後の回復次第ではラストランはアメリカ・ブリーダーズCターフになる予定とのことだが、確率としては50%程度とのこと。このまま引退する可能性もあるとコメントしている。

 ゴールデンホーンはこの日のように硬い馬場でこそ生きる馬なので、出来ればジャパンCに遠征も考えて欲しかったのだが・・・。さすがにその可能性は無さそうだ。その点はちょっと残念かな。

 トレヴの凱旋門賞3連覇の夢を見事打ち砕いたゴールデンホーン。近年まれに見る強さを誇った英国ダービー馬が種牡馬としても大成功することを期待してやまない。

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