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勝負どころでの反応が鈍かった?馬鹿を言うな!リアルスティールの敗因は福永祐一 ~2015スプリングSレース回顧vol.1~

   

 22日。中山競馬場では皐月賞トライアル「第64回 スプリングステークス(GⅡ 芝1800m)」が行われた。

 このレースで1番人気に支持されたのが、前走共同通信杯でドゥラメンテを破り、無敗で重賞制覇を飾った良血馬リアルスティール

 その素質の高さから、戦前にはクラシック最有力候補との呼び声も高かったリアルスティールだが、ここではキタサンブラックの快走に会い2着と敗れてしまう。

 実力断然とも呼ばれていた同馬は何故敗れたのか?そしてこの敗戦は今後どのような影響を与えるのか。

 今回の記事ではリアルスティールのみに焦点を当て、スプリングSを振り返ってみたいと思う。

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究極とも言える末脚を繰り出したリアルスティール

 JRA公式ラップ:12.7 – 11.6 – 12.4 – 13.1 – 12.8 – 12.0 – 11.8 – 11.2 – 11.5
 上がり     :4F 46.5 – 3F 34.5

 負けるとすれば内でどん詰まるか、大外回して且つ仕掛け遅れて届かずの2つに一つだと思っていたが、結果として後者のパターンそのままの負け方。典型的な脚を余して負ける、ある意味福永祐一騎手らしい競馬だったと思う(苦笑)

 リアルスティール自身の状態はマズマズだったと思う。確かにここは前哨戦なのでビッチリ仕上げてきた訳ではなく、レース後の矢作調教師のコメントにも有るように「お釣りを残した仕上げ」だったことは間違いないが、それでも普段の走りを見せるには支障のない仕上がりだった。

 実際いくらドスローで流れたとはいえ、そこまで速くないこの時期の中山芝コースで上がり33秒6の脚を繰り出したのだから、状態が悪い筈がない。

 またレース後、福永騎手が「勝負どころでの反応が鈍かった」とコメントしており、このコメントがリアルスティールの状態面に問題が有ったという主張の論拠になっているようだが、それはどうかな?と思わざるを得ない。

 福永騎手の言う「勝負どころ」がどの場面だったのかは詳しい言及がないので想像するしかないが、恐らく4コーナーから最後の直線に向いた区間のことを言っているのだろう。

 確かにこの区間でのリアルスティールの動きを他馬と比較すると、例えば馬なりでマクッて行ったとか、瞬時に加速したという姿は見られていない。映像だけを見れば福永騎手の言う「反応が鈍い」を信じてしまいそうだ。

 ただ実際のところ、この区間はこのレースにおける最速ラップを計時した区間である。中山のキツいコーナー込みで、1ハロン11秒2というラップは相当速い。馬群全体がそんなハイラップを刻んでいる中で、馬なりのままマクッて行ったりスパッと抜け出したら、それはディープインパクトやオルフェーヴル以上のバケモノだ。

 他の馬よりも反応が良いという思い込みがあるから、流れを考慮せずに「反応が鈍い」と感じたのだろう。実際にはちゃんと反応しているのだ。

 ラップを見て頂ければ分かると思うが、このレースは最後の2ハロンだけ突出して速いラップを刻む極端な上がりの競馬となった。これを後方から追い込んできたリアルスティールは、この2ハロンを推定11秒0-11秒0という、直線が短く且つ急坂が存在する中山コースでは究極とも言える末脚を繰り出している。状態に少しでも問題が有ったら、このような末脚を繰り出せるはずがない。

 となると敗因はもう完全に福永騎手の仕掛けにあると言わざるを得ない。有馬記念のジャスタウェイもそうだが、彼はどうもこういった末脚に自信のある馬に騎乗すると、仕掛けが遅れてしまう傾向にあるようだ。中山のような直線300mそこそこの小回りコースで、ギリギリまで仕掛けを我慢しても良いことなんて殆どないと思うんだけどね。

 今回これまでよりポジションを1つ下げ、中団から差す競馬を行ったリアルスティール。これ自体は明らかに意図的なモノで、次の皐月賞や大目標のダービーを見据えて、脚質に幅を持たせる意味で実施したのだろう。

 陣営からそういったオーダーがあったのか、福永騎手自身がそう思ってこの戦法を選択したのかは分からないが、一般的にトライアルでは折り合いを重視し、脚を計る意味も併せて差す競馬を好んで行う競馬関係者は多い。もちろん既に出走権をほぼ手中に収めている馬限定では有るが。

 個人的には既に好位差しの競馬が出来ている以上、今更ポジションを一つ下げる競馬を実施する意味があるのか?と思ってしまうのだが、競馬関係者の中での差し・追い込み信奉は想像以上に大きいのが実情だ。

 そのある意味宗教じみていると言える観念は、先行して差されると騎手の責任にされることが多いのに対し、差して届かないと「展開の綾」で片付けられることが多いことからも良く分かる。

 あの名騎手であった岡部幸雄氏が現役時代に良く言っていた「先行抜け出しこそ競馬の王道」という言葉は、少なくとも表面上は過去のモノとなってしまった。ただ実際には今も先行抜け出しの戦法こそが一番成績が安定し、且つ勝率の高い戦法なのは変っていない。

 近年は造園技術の向上により以前よりも馬場が荒れなくなった為、差し届かない競馬を頻繁に見るようになった。現実と合致しない差し信奉。まさに「宗教じみている」という言葉がピッタリだと思う。

 今回福永騎手が実施した差す競馬は、リアルスティールの将来にどのような影響を及ぼすであろうか。個人的には控えてあれだけの末脚を発揮したので、その切れ味の魔力に魅入られた福永騎手は皐月賞、ダービーと差す競馬を実施する可能性が高いと考えている。この2つのレース共、先行抜け出しこそが一番勝利に近い戦法であるにも関わらずに・・・だ。

 今回の敗戦を受けて、リアルスティールに1頭の競走馬の姿がダブってきた。同じく福永騎手を背にクラシックに挑むも、無冠に終わってしまったワールドエースである。

 クラシックは馬の力だけでは勝つことが出来ない。厩舎は元より騎手によるプラスアルファがあってこそ、初めてクラシック戴冠の栄誉は頭上に輝く。

 今回負けたとは言え、クラシックを勝つに相応しい能力の持ち主であることを、改めて見せ付けたリアルスティール。彼がその能力に相応しい栄誉を獲得出来るかどうかは、福永騎手の手にかかっている。

 - レース回顧

        
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