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【スプリンターズS回顧】凡戦の一言で片付けるのは勿体ない、色々と考えさせられるレースに

   

 1つ前に行われた同距離の古馬1000万条件特別、勝浦特別の勝ちタイムが1分8秒0。

 そしてそれから約40分後に行われたG1スプリンターズSの勝ちタイムが、勝浦特別よりも0秒1遅い1分8秒1。

 過去にも同じ日に行われた同距離のレースで、G1よりも条件戦の方が時計が速いという例はいくつか有った。なので今回の出来事も個人的には目くじら立てるほど騒ぎ立てる必要は無いとは思うのだが・・・。

 それにしても何とも不思議なレースだったというのが、レースを見終わってからの率直な感想だろうか。

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 今回のスプリンターズSを前後半3ハロンずつ区切ると、前半3ハロンが34秒1、後半3ハロンが34秒0となる。

 これだけ見るとキレイなイーブンペースであり、この日の内が有利な馬場コンディションを加味すると、一見先行馬が上位を独占するのが当然の流れに映る。

 しかし実際には逃げたハクサンムーンは12着と大敗し、2番手を進んだアクティブミノルは9着。

 3番手だったミッキーアイルは4着と何とか掲示板を確保したが、4番手を進んだベルカントは13着に沈み、その外を進んだレッドオーヴァルも6着と伸び切れなかった。

 逆にスローな流れなのにもかかわらず、勝ったストレイトガールは中団後方からゴール前一気に差し切る脚を披露。3着のウキヨノカゼはその更に後方から、直線一気の強烈な末脚で追い込んできた。

 特にハイペースでもなく先行馬有利の馬場状態なのに、差し・追い込み馬が上位を占めた今回のスプリンターズS。

 普段我々が多用する「テンの3ハロン」、「上がりの3ハロン」という言葉の括りの中では全く説明が付かない、不思議な決着になったと言えるのではないだろうか。

 「なぜ先行馬が残れなかったのか?」この疑問を解く鍵はこのレースの2ハロン目、3ハロン目、4ハロン目のラップの刻み方にあるのではないかと筆者は思っている。

 今回のスプリンターズS。実はスタート直後のペースはそんなに遅くはなかった。

 最初の1ハロンは例年並みか少し速いレベルの11秒7で通過しているし、2ハロン目の10秒7も決して遅いペースではない。ここまでの時点で先行した馬はそこそこ脚を使わされている。

 問題は次の3ハロン目。逃げたハクサンムーンの酒井学騎手はここで急激なペースダウンを敢行。結果3ハロン目の通過ラップは11秒7と、実に1秒もラップを落とす行為に出てしまう。

 人間もそうだがペースが速いからと言って急激にペースを落とすと、緩やかにペースを落とした時よりも筋肉・心臓に負荷が掛かり大きくスタミナを消耗してしまうものだ。

 ハクサンムーン鞍上の酒井騎手は1・2ハロン目はハナを奪うのに脚を使ったので、3ハロン目はペースを落として脚を溜めようとしたのだろうが流石に1秒もペースを落としたのはやりすぎた。

 急激なスピードダウンでハクサンムーン自身の心臓と筋肉にも負荷が掛かっただろうし、急激にペースを落とした結果あっという間に後続が迫ってきたので、また4ハロン目からはペースを上げざるを得ない状況に。

 この急激なペースダウンとペースアップで、ハクサンムーンのスタミナはかなり奪われたのであろう。直線ではここまでスプリント路線のトップを走ってきた馬とは思えないぐらい、あっさりと馬群に沈んでいってしまったハクサンムーンだが、こういった拙いレース運びでスタミナとやる気を奪われてしまった結果が、あのズルズルと後退する姿となって現れたのではなかろうか。

 そしてこのハクサンムーンの造った変則的なペースは、他の先行していた馬たちにも大きく影響を与えた。

 3番手を進んだミッキーアイルは一気に緩んだペースに明らかに折り合いを欠いていたし、4ハロン目からは3頭雁行するような形となり息を抜く場面を作ることが出来なかった。

 5番手にいたレッドオーヴァルは緩んだペースに乗っかってしまい、残り3ハロン目から動かざるを得ないという、早仕掛け気味の普段とは真逆の慣れない形の競馬に。

 これは中団以降にポジションを取っていた他の有力馬も一緒で、「スローなので早めに押し上げねば」という気持ちから殆どの騎手が残り600mからエンジンを吹かしていた様に思う。

 この時周りの動きに惑わされず(身動きが取り辛いポジションに居たという事もあるだろうが)、直線まで追い出しを我慢していたのがストレイトガールに騎乗していた戸崎騎手。

 早仕掛けの影響で、中山の急坂を登りきる辺りで一斉に失速する有力馬たち。ギリギリまで追い出しを我慢していたストレイトガールと、直線勝負に賭けていたウキノヨカゼが最後一気に伸びてきたのは、このような経緯を考慮すると当然と言えるかも知れない。

 今回のスプリンターズSはその勝ち時計の遅さから、今後色々と物議を醸すレースになることはほぼ間違いないだろう。既に「世紀の凡戦だ!」という声や、負けた騎手たちを糾弾する声はネット上のあちこちで上がっているようだ。

 まあ実際のところメンバー的にもそこまでレベルの高い一戦ではなかったような気もするし、一部騎手たちのレース運びは「おいおい」とツッコミを入れたくなるので、これら糾弾する声が間違っているとは言えない気もする。

 ただレースの中身を精査してみると、「意外と見応えのある面白いレースだったかな?」という思いを抱いた。ただのタイムアタックではない、勝負としての競馬の複雑さが今回のレースには現れていたとも思えるのだ。

 「ただ速い馬が勝つのが競馬ではない。強い馬と上手い騎手、そして流れを引き寄せるチームが勝つのが競馬なのだ」と、今回のスプリンターズSを観戦して改めて思った次第である。

 - レース回顧

        
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