馬事総論ドットコム

馬に関することなら何でも取り上げるブログ

呆れるほどの素質と強さ!万全ではなかったエアロヴェロシティが力で日本馬を捻じ伏せ勝利 ~2015高松宮記念レース回顧~

   

 29日に中京競馬場で行われた春のスプリント王決定戦、「第45回 高松宮記念(G1)」。

 フルゲート18頭の精鋭たちにより雨の中熱いレースが展開された訳だが、勝ったのは短距離王国香港が誇るスプリント王、エアロヴェロシティAerovelocityだった。

スポンサーリンク

エアロヴェロシティの強さばかりが目立ったレース

 JRA公式ラップ:11.9 – 10.7 – 11.4 – 11.6 – 11.3 – 11.6
 上がり     :4F 45.9 – 3F 34.5

 折からの雨で馬場状態は稍重。時計の掛かり方を見ても、それなりに雨の影響は有ったと思われる。

 もともと春の中京開催は芝の根付きの関係から馬場状態が悪いことが多いが、今開催も特に4コーナー内側の馬場状態の悪さは目立った。それに加えて最後の直線コースは外側が若干高く、内側に向かって下るような傾斜が付けられており、雨が降るとコース内側に向かって水が流れる構造となっている。

 この影響で降雨時は外より内の方が水分を多く含む馬場となり、重く走り辛い為にここを通った馬は伸びない状況が多く発生する。この日も後半のレースになるにしたがって内を避ける馬が続出していたが、開催を重ねたことによる馬場悪化に加えて、降雨による更なるマイナス要素がプラスされた訳で、当然の選択と言えるだろう。

 レースに話を戻すと、アンバルブライベンが戦前の予想通りに先行した訳だが、前半600m通過時の時計が34秒0。馬場状態を考えるとそれなりに速い時計だったと思う。

 ただ超ハイペースというほどでは無かった。前で競馬した馬たちで決まったように、先行馬でも力がある馬ならギリギリ許容範囲の流れだったと思う。

1着エアロヴェロシティ

 正直状態は良いとこ8割ぐらいだったのではないだろうか。

 マイナス16キロの馬体減自体は、香港と日本では計量する日が違う(香港はレース3日前に計った数字を発表する)ので、数字そのものを鵜呑みにすることは出来ないのだが、多少脾腹の部分が寂しい感じだったのは確かだ。

 ただそれよりも印象的だったのが全体の緩さ。背中の肉が多少落ちてしまったのか、背中から腰に掛けての支えが弱く緩慢な歩き方を見せており、また飛節こそ伸びていたが一歩一歩が重く、前と後ろの連動感も乏しかった。

 そして筋肉の張り、締まりも本来の状態から考えるとイマイチだった可能性は高い。前後肢の捌き自体はスプリンターとは思えない柔らかさを見せていたが、これは単純に筋肉の締りが緩くて、いつもより関節の稼動域が広くなっていた為とも考えられる。

 このように仕上がりに関しては強気になれる部分がなかったエアロヴェロシティだが、レースに行くと実に強かったと思う。

 逃げなくても馬群の中でガリガリに揉まれなければ力を発揮できることは、今までのレース履歴の中で証明済みなので、周囲を馬に囲まれない3番手で競馬出来たことは良かったと思う。

 ただ内枠を引いたことにより、馬場状態の悪い内を通らされるのがどうかと思っていたが、そこは鞍上のパートン騎手が上手かった。4コーナーまでは内側でコースロスを極力押さえる進路取りをして、直線入り口では最終コーナーを曲がる時の遠心力を利用して、自然と状態の良い馬場の真ん中に持ち出す手綱捌き。

 他の馬が皆内を嫌って外を回っており、周囲に馬が居ないという幸運が味方したのはあるが、それにしてもスポット参戦とは思えないぐらい馬場状態を熟知しており、本当に凄い騎手だなと改めて思った。昨年も短い期間ではあるが短期免許で来日し、素晴らしい成績を残していたパートン騎手。是非とも今年も短期免許を取得し参戦して欲しいね。

 話を戻すと、馬場の中央に導かれ前を行くハクサンムーンに対する追撃態勢を整えたエアロヴェロシティ。そのキャリアの中で初めて遭遇する直線の急坂に戸惑ったのか、その区間では伸びあぐねる場面も有ったが、坂を登りきり左手前に代えるとグンと伸びる。

 最後はゴール前でももう一度右手前に代えるなど若さを見せつつも、ハクサンムーンを捕らえ先頭でゴール板を通過したエアロヴェロシティ。半馬身という着差以上に強いレース振りだったのではなかろうか。

 初の国外遠征、自身2度目となる左回り、初めて経験する直線での急坂、初めての道悪競馬、そして万全とは言えない仕上がりと、いくつもの悪条件を物ともせずに完勝したエアロヴェロシティ。正直恐れ入りましたというしかない強さだったと思う。

 もともとムラッ気はあるものの、実力自体は香港における歴代の名スプリンターたちと引けを取らない存在として高評価されているエアロヴェロシティ。真面目に走ればあの怪物サイレントウィットネス級という評価も一部ではあるほどで、それを考えると日本馬で太刀打ちできなかったのは仕方がない部分はあるかも。

 短距離王国と呼ばれるオーストラリアの現況を見ても分かるとおり、一国のみの馬産で短距離から中距離、そして長距離と全てにおいて世界トップクラスのレベルを維持することは難しいからね。それこそアメリカ並みの生産頭数(年間3万頭)は最低限必要と思われ、それを日本の馬産に求めるのは現実的に不可能だ。

 なのでクラシックを勝つことを最大目標に据えてサラブレッド生産が行われている日本において、短距離路線が手薄になるのは当たり前の現象といえる。これは馬を買う側の意識が変らない限り、今後もこの傾向は続くだろう。そう考えるとロードカナロアのような世界的にも突出したスプリンターが誕生したことは、本当に奇跡的出来事だといえるのだが(苦笑)

 見事外国馬初の高松宮記念制覇を成し遂げたエアロヴェロシティだが、秋はスプリンターズS参戦も予定されていると聞く。実は香港馬の中でもスピードタイプである同馬。

 芝1200mの持ち時計も日本式で1分7秒0というかなり速いモノを持っており、高速決着になり易いスプリンターズSの方が実は更にパフォーマンスを上げるのでは?という声すらある。そしてその可能性は非常に高いといえるだろう。

 秋もまたこの卓越した名スプリンターの実力を見せ付けられることになるのか?今からその時を楽しみに待ちたいところだ。

その他の馬たち

 2着のハクサンムーンはこれ以上ない競馬をしたと思う。これで負けたのだから正直どうしようもない。相手が悪かったというしかないだろう。

 3着のミッキーアイルの激走には驚いた。筋肉が付いて短距離のスピードに付いていける馬体になっていたのが、最大の好走要因だろう。

 また折り合いに関しては外枠で前に壁を作ることが出来ずに、結構怪しい場面も見せていたが何とか我慢することが出来た。あそこでもう少しスムーズに折り合いが付くようになれば、最後2着まで押し上げられていたかも知れないね。

 5着のコパノリチャードは位置取りかなぁ・・・。後ろから行っても差す脚が無いので、4角先頭ぐらいの競馬じゃないと伸び負けする。もっと積極的に乗っても良かったかもしれない。

 ダイワマッジョーレは出遅れが全てだろう。この距離であれだけ出遅れてしまうと厳しい。それで6着まで追い込んできたのだから、逆に大したものだと感心してしまうぐらいだ。

 中団から後方で競馬を進めた人気どころ、サクラゴスペル・ストレイトガール・レッドオーヴァルに関しては、結果的に「差し」という脚質が仇になった感じかな。

 それぞれ馬場の外を回したこともあって、かなりの距離ロスを生じていた。このレベルのレースになると先行馬も強く、ゴール前での大逆転という状況も中々起こり辛いので、後ろから競馬する馬に多大なロスが生じるレース展開では厳しい。

 このレース直前までの「今の中京で内の先行馬は厳しい」という先入観が、総じて悪い方向に働いたお手本とも言える差し・追い込み馬の凡走振りだった。

 - レース回顧

        
follow us in feedly

  関連記事

スピルバーグが伸び切れなかった理由 / プリンスオブウェールズS回顧

 現地時間の17日、イギリス・アスコット競馬場で芝10ハロンのG1プリンスオブウ …

【NHKマイルC回顧】横山典弘が魅せた!絶妙な手綱捌きでクラリティスカイを勝利に導く

 JRA公式ラップ:12.4 – 11.1 – 11.8 …

【安田記念回顧】モーリス 大一番で見せた新たな姿!夢は海を越える

 スタートしてモーリスが何処にいるか確認した時、思わず目を疑った。過去3戦、全て …

ミッキークイーン 人馬共に素晴らしいパフォーマンスで納得の2冠達成 / 秋華賞レース回顧

 「勝利に相応しい馬が、勝つべくして勝った」  20回目の節目を迎えた今年の秋華 …

【NHKマイルC回顧】たった1つのミスで栄冠を逃してしまったアルビアーノ

典ちゃんとクラリティスカイ。 pic.twitter.com/nOSywBscM …

「キズナは終わった?バカなことを・・・」敗れても実力を証明したキズナ ~2015大阪杯レース回顧vol.1~

キズナ。 pic.twitter.com/dGQ7CIrXYo — …

怪物相手に不利な条件で3着と健闘!ゴールデンバローズの未来は明るい ~2015UAEダービーレース回顧~

Jockey Christophe Soumillon tries to spo …

阪神大賞典で復活したゴールドシップ
【天皇賞・春回顧】ゴールドシップの底力を引き出した横山典弘

 正直パドックの気配はイマイチに見えた。  前走後に脚元に不安を発症したこともあ …

クイーンズリング かなりの成長を見せるも戴冠まではあと一歩・・・ / 秋華賞レース回顧

【報知競馬情報】 【秋華賞】クイーンズリング2着 Mデムーロ「惜しかった」 ht …

ダノンレジェンドの強さとシゲルカガのスピードが印象的だった東京スプリント

【PHOTO】ダノンレジェンド Danon Legend http:// …