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マカヒキ 川田将雅の執念が勝利の女神を振り向かせる / 2016日本ダービー回顧

   

 クラシック開幕を前にマカヒキの鞍上がクリストフ・ルメール騎手から川田将雅騎手へと変更になったと発表された時、多くの競馬ファンは不安の声を上げた。

 日本人の若手・中堅世代の騎手の中では実績ある川田騎手だが、それでもその上の世代の武豊、横山典弘、蛯名正義、岩田康誠等の日本人騎手、そしてミルコ・デムーロ、クリストフ・ルメールといった外国人騎手に比べると、大レースでの信頼感は劣ると思われていた。

 そのような声が上がる中で迎えた皐月賞。マカヒキは道中後方から大外を回って追い込むも、同馬よりも前にポジションを取っていたディーマジェスティと同じような末脚しか繰り出せず、完敗と言っても過言ではない2着。

 このレースを見た多くのファンは「やはり川田ではダービーは勝てない」と再び声を上げた。彼が実はテン乗りである事や、今までこのような競馬しかマカヒキ自身がしたことを無いという事実を忘れたかのように。

 そう、川田騎手にとって同情の余地は大いに有った。しかしそれでも「プロの騎手である以上、結果が全て」と言い訳は許されなかった。「悔しければ、見返したければ、ダービーで結果を残すしかない」と。

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 そして迎えたダービー当日。マカヒキの状態は率直に言って平行線だったと思う。

 年明けからずっと使い続けてきた同馬。皐月賞からの上がり目が望み辛いことは、レース前からある程度予想されていた。

 パドックに現れたマカヒキは、大方の予想通り皐月賞とほぼ変わらない出来だった。若干前の捌きが硬かったかもしれない。陣営の苦心が感じられる仕上がりに映った。

 マカヒキ自身に上積みは望めない。となると皐月賞を上回る結果を残す為には、川田騎手が奮起するしかない。川田騎手の双肩には、皐月賞以上の重圧が圧し掛かった。

 しかし彼はその重圧には負けなかった。この大一番で安全策に走ることなく、勝負を賭けていった。

 スタート直後、ゲートを出た瞬間に手綱を動かしマカヒキに「いつもより前で競馬するぞ!」と指令を出す川田騎手。それに反応し好位を伺う勢いで前進するマカヒキ。

 マカヒキの競走馬としての長所の一つとして、その従順な気性と操縦性の高さが挙げられよう。しっかりと川田騎手の指令に忠実に動く同馬。川田騎手も良いポジションが取れたと見るや必要以上に前に行き過ぎず、中団のラチ沿いという最高のポジションを確保した。

 この何気なく見えるポジション取りだが、実は相当に度胸のいる行為だったと思う。

 先ほども述べたが、マカヒキという馬は後方からの競馬しかしたことがない。しかも同馬の全姉はスプリンターとして活躍するウリウリ。2000mでは結果を残しているが広い府中の2400mをこなすかは未知数で、川田騎手も絶対の自信はなかった筈。

 しかもいつもより前のポジションでの競馬。慣れない競馬で消耗し、直線でスタミナ切れとなって馬群に沈むシナリオも十分に想定できた。

 それでも勝つ為にはこれしかないと決断し、リスクを負う選択を下した川田騎手。その瞬間、彼はダービーを勝つ資格を得たのではないだろうか。

 最後の直線、馬群が密集しスペースがそんなに無い中でも無理に大外に出すことなく、虎視眈々と前が開く瞬間を狙い続けたマカヒキ。

 そしてエアスピネルとサトノダイヤモンドの間に1頭分のスペースが開くと、躊躇無くそこを突く選択を下した川田騎手。そしてそれに応えて極上の末脚を繰り出すマカヒキ。

 マカヒキが内からサトノダイヤモンドに並び掛けた時、サトノダイヤモンドはその重圧に怯んだのか、それとも苦しかったのか、大きく外に寄れてしまう。

 その隙に抜け出しを図るマカヒキ。まだ諦めないと態勢を立て直し、再び迫るサトノダイヤモンド。

 自身が選ばなかった馬に2度も後塵を拝す訳にいかないと、懸命に手綱を動かし追うルメール騎手。

 俺は代役などではない、そしてマカヒキはダービー馬に相応しい馬だと証明したいと、ゴール板を目指し必死に馬を鼓舞する川田騎手。

 2頭の名馬、そして2人の名手の魂の籠もった競り合いはゴール板まで続き・・・、そして勝利の女神はマカヒキと川田騎手の執念に対し微笑んだ。

 昔からダービーは「運の強い馬が勝つ」と言われている。しかし筆者はそうは思わない。

 ダービーはその時に本当に強い「人馬」が勝つと思うのだ。能力も、そして精神力も。そういう人馬が最終的に勝運を引き寄せるのだろう。

 この日、日本で一番強い人馬はマカヒキと川田将雅だった。

 彼らこそが、第83代日本ダービーの栄冠を受けるに相応しい王者だったことは間違いない。

 - レース回顧

        
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