ハープスター引退。彼女が果たせなかった夢は仔に引き継がれることに
まぶたを閉じると、彼女が輝きを放った数々のレースが脳裏に蘇ってくる。
今日までの日本の競馬史を振り返ってみても、比肩する存在を探すのが困難な程の強烈な末脚を武器に、数々の名勝負を演じ続けてきた名牝ハープスター。
彼女はまだ4歳。2度に渡った海外遠征では苦杯を飲んだものの、その苦い経験を糧にきっと雪辱を晴らす日が来るはず、栄光をその手に掴むはず、そう信じていたのだが・・・。
残念ながらその夢は二度と叶わぬものとなってしまった。
先に報道されていた右前脚の繋靱帯炎に加えて、この度精密検査により右前脚の種子骨靱帯炎も併発していることが判明。
損傷の度合いが酷く復帰に相当な時間が掛かること。そして復帰したとしても以前の走りを取り戻せる可能性が高くないことから現役続行を断念。引退し繁殖牝馬となることが、7日馬主であるキャロットクラブのホームページで発表された。
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ハープスターの出資者が友人にいることもあり、自分にとってはデビュー前からずっと注目していた存在である同馬。
なので正直全てのレースが印象に残っているのだが、その中でも特に思い入れのあるレースといえば同馬が初めて敗戦を喫した阪神JFと、初のビッグタイトル獲得となった桜花賞の2つのレースが特に印象に残っている。
ハープスターの競走生活を語る時に、決して欠かすことが出来ない存在がいる。2013年の2歳女王レッドリヴェールだ。
このライバル2頭が阪神JFと桜花賞で繰り広げた死闘は、近年の日本競馬の中でもトップクラスの激しさだっただろう。
初対決となった阪神JFではゴール前、勢いではハープスターが完全に勝っていたものの、脅威の勝負根性を見せたレッドリヴェールがゴール板を通過する瞬間、ほんの数センチだけ前に出る執念を見せ激戦を制す。
そして2度目の対決となった桜花賞では、昨年の雪辱を晴らすとばかりにハープスターが大外からレッドリヴェールを目がけて襲い掛かる。そして激しいデッドヒートの結果、ハープスターが見事クビ差先着しレッドリヴェールに借りを返すと共に、念願のビッグタイトル獲得を実現することとなった。
近年、これほど痺れたライバルストーリーは正直思い出すことが難しい。それほどライバル2頭の激突は光彩を放っていたし、あの2戦のレース後の高揚感は今でも鮮明に思い出すことが出来るほどだ。
実はハープスター、レッドリヴェール共に出資している友人が別々に存在しているので、その分余計に思い入れが深い面はあるかも知れない。ただそれを差し引いてもこの2頭の戦いはハイレベル且つ心に響くものだった。そう確信している。
歴代の名牝に比肩するどころか、その上を行く可能性を感じさせながらも怪我により無念のリタイヤを強いられることとなったハープスター。
叶うことならばまだまだ彼女の走りを見続けたいというのが筆者の正直な気持ちなのだが、彼女には母親としてその優れた血を後世に継ぐという大事な仕事がある。
新たに大きな仕事に挑む彼女にとって、このような未練は禁物だろう。ただただ母親としてのハープスターの成功と幸せを祈りたい。
▼ハープスターが引退 繋靭帯損傷に加え種子骨靭帯炎も併発のため - netkeiba.com
昨年の桜花賞馬ハープスター(牝4、栗東・松田博資厩舎)が引退することがわかった。7日、キャロットクラブのホームページで発表された。
同馬は右前の繋靭帯を傷めていることから長期休養が必要と診断されていたが、その後の検査でさらに右前の種子骨靭帯炎も併発していたことが判明し、関係者が協議した結果、復帰は困難と判断された。

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