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名馬テイクオーバーターゲット、放牧中の事故で死す

   

 2006年のスプリンターズSを制し、日本でもお馴染みの存在であった豪州のチャンピオンスプリンター、テイクオーバーターゲットTakeover Target。

 競り市で約11万円と非常に安い金額で取引されながら、後には世界最強スプリンターの地位まで登り詰めた偉大な競走馬は、今朝放牧中のアクシデントによりその生涯を閉じた。

 地元オーストラリアでも絶大な支持を受けていたテイクオーバーターゲット。その偉大なる競走馬の死に、心からの哀悼の意を表したい。

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 競り市で約11万円という金額で取引されたように、その当時のテイクオーバーターゲットは競走馬として全く期待されていない存在だった。

 この競り市で取引された段階で、彼はもうじき4歳になろうとしていた。膝に故障を抱えていた彼は、この時期までデビューも出来ずに半ば投げ売りの状態で、馬主兼調教師であるジョセフ・ジャニアック師に購入されたのである。

 テイクオーバーターゲットにとって、ジャニアック師がオーナーとなってくれたことは幸運であった。ジャニアック師は調教師では有ったが生活は苦しく、朝はパン屋、昼は調教師、夜はタクシードライバーと二足の草鞋ならぬ、三足の草鞋を履くような生活をしていた人物。

 それだけに一度所有した競走馬はとにかく根気強く調教し、わずかな可能性に賭けてチャンスを待ち続ける辛抱強さがあった。普通のオーナーや調教師ならば、4歳を迎えてもデビューできない競走馬などとっくに処分してしまっていただろう。

 テイクオーバーターゲットはジャニアック師だからこそ、競走馬としてデビューできたのだ。

 馬は大事にしてくれた人のために、全力を尽くして走るという半ば願望みたいな説がある。正直信憑性はイマイチだと厩務員をやっていた筆者ですら思うのだが、テイクオーバーターゲットのその後の競走成績を考えると、実は本当なんじゃないかと信じたくなる。

 4歳4月にデビューを迎えたテイクオーバーターゲットはデビュー戦を快勝。その後7連勝で一気にG1馬にまで登り詰める。

 それだけでも相当凄い話なのだが、その後彼は6年もの長期に渡って世界トップクラスのスプリンターとして活躍し続けることになる。彼が高齢になっても能力の衰えが少ないと言われるセン馬だったとしても、この長期間に渡る活躍は凄いとしか言いようが無い。

 テイクオーバーターゲットは2009年のジュライC(英G1)を最後に引退するまでに41戦し、その内21のレースで勝利を挙げた。獲得したG1タイトルは8つ、その中にはスプリンターズSや、シンガポールのクリスフライヤ国際スプリント(星G1)も含まれる。

 また当時はまだG2だったが、ロイヤルアスコット開催で行われたキングズスタンドS(英G2)をも勝利している。この世界一華やかで栄光ある舞台での勝利は、テイクオーバーターゲットとジャニアック師にとっては生涯忘れられないものとなったのではなかろうか。

 一時は競走馬として崖っぷちまで行ったテイクオーバーターゲットが見せた見事な下克上は、地元オーストラリアでも高く評価され絶大なる支持と人気を集めたらしい。

 彼が亡くなったという一報が報じられてから、現地のツイッターなどではテイクオーバーターゲットを悼むツイートが凄まじい数投稿されている。その中には「ピープルズチャンピオンPeople’s CHAMPION(民衆の王者)」と彼を称えるツイートが多く見られ、心から愛されていたんだなと胸が熱くなった。

 そのエピソードと見事な走りから、世界中の競馬ファンに愛されたテイクオーバーターゲット。まだ16歳だった彼の早すぎる死には本当に胸が痛む。

 いま我々に出来ることは彼の在りし日の姿に思いを馳せ、その功績を称え安らかな眠りを祈ることだけだろう。

 偉大なるチャンピオンスプリンター、そして偉大なる競走馬テイクオーバーターゲットのご冥福を心からお祈りします。

【テイクオーバーターゲット Takeover Target (豪州:ジョセフ・ジャニアック厩舎所属 セン16歳)】
 父:セルティックスウィングCeltic Swing
 母:シャディーストリームShady Stream
 母の父:アーチリージェントArchregent
 通算成績:41戦21勝(内G1・8勝)
 主なタイトル:2004サリンジャーS(豪G1)、2006ライトニングS(豪G1)、2006ニューマーケットH(豪G1)、2006キングズスタンドS(英G2)、2006スプリンターズS(日G1)、2007ドゥームベン10000(豪G1)、2008クリスフライヤー国際スプリント(星G1)、2009TJスミス(豪G1)、2009グッドウッドH(豪G1)

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